(現地で飲む)世界のビール vol.266

「Quöllfrisch Naturtrüb」

いかにもスイスっぽい、アルプスの天然水を使ったスッキリ爽やかなビール。

at Cantinetta Antinori in Zurich, Switzerland

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場所:
Cantinetta Antinori

住所:
Augustinergasse 25, 8001 Zürich,
Schweizerische Eidgenossenschaft(スイス連邦、Swiss Confederation)
地図

備考:
スイス最大の都市チューリッヒ。

スイスの都市の中では人口や経済規模も最大の都市であり、しかもヨーロッパの都市の中でも三本指に入る金融都市でもあります。

そんな経済的に発展したイメージがあるチューリッヒですが、実際は誰もが想像する自然豊かなスイスのイメージそのままの美しい湖と山々が背景になる街です。

そんなイメージそのままのビールラベルを描いた「クヴェルフリッシュ(Quöllfrisch)」。

スイスっぽい高原ののどかな風景を描いたこのビールは、チューリッヒの東90キロほどに位置するアッペンツェル(Appenzell)で醸造される、いわゆるアッペンツェラー・ビールのひとつです。

アッペンツェルの街は、アッペンツェラー・チーズでも世界的に有名な美食の街で、この街で1810年からあるビール醸造所を1886年にロッハー家が経営を引き継いだ「ロッハー醸造所(Brauerei Locher AG)」で醸造される地ビールが「クヴェルフリッシュ(Quöllfrisch)」。

そのひとつ「Quöllfrisch Naturtrüb(クエルフリッシュ・ナァトゥアートリューブ)」は、アッペンツェル地方の綺麗な山から流れてきた美味しい水を使い、酵母を濾過せず昔ながらの伝統的なビール醸造スタイルで造られたラガービールです。

「Naturtrüb(自然の濁り)」の名の通り、くっきり透明ではないものの黄金色の美しい見た目と、フルーティな香りに酵母の風味というスイスの大自然を感じるビール。

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そんな「クヴェルフリッシュ(Quöllfrisch)」シリーズのビールをもう一杯。

(現地で飲む)世界のビール vol.267

「Quöllfrisch Lager Hell」

こちらはスイスビールアワードで金賞に輝いたという、アッペンツェラー・ビールを代表するラガービールの逸品。

ちなみに“Hell”とは「Hellbier(Helles Bier)」という意味が語源で、いまや“ヘレスビール”という呼び名はメジャーになりつつありますが、結局のところ“淡いビール”とか“薄いビール”という意味です。

たしかに薄めのテイストではありますが、ほのかなアフターの香りの余韻に浸れるビールで、ラベルののどかさも相まって平和なスイスをイメージできるビールです。

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さて…
ここまでスイスをのどかとか平和とか言ってきましたが、その平和は多くの日本人が考える、スイス政府による1815年の“永世中立国宣言”だけによるものではなく、一見のどかに見えるスイスという国の政府と国民の覚悟がもたらす平和であることに、チューリッヒのバーで語り合った知人たちにコンコンと教えられました。

不変の真理を伝えるラテン語のことわざ、
“Si Vis Pacem,Para Bellum(平和を欲するなら戦争を準備せよ)”
という考えを国をあげて実践し、世界に名だたる精強な陸軍である“スイス・アーミー”を男子徴兵と国民皆兵の精神により創り上げたスイス。

たしかに地勢および地政学的に、周囲をドイツ、オーストリア、フランス、イタリアという人類史上の覇権大国に囲まれ、ただの通り道としても侵略蹂躙される危険性があるスイスでは、伝統的に国土防衛の意識が高いのだという。

スイス国民に無償で配布された書籍『民間防衛』の冒頭にも、“国土防衛は軍人だけでなく老若男女を問わず国民全員で準備して任務につくもの”と書かれ、スイス国民は自宅に食糧備蓄や武器や銃器も準備しているという。

万が一でも他国が侵略してきた場合には、侵略者と刺し違えても一矢報いて無傷では居させず、究極的にはスイス国土を焦土化させて侵略者には一切スイスの果実を渡さない、という国の覚悟と準備。

そこまでの覚悟と準備があるからこそ、他国も戦争を仕掛けてこない結果の平和。

そんなスイス国民の覚悟を聞かされると、平和を維持するために、どれだけの覚悟と犠牲(拠出)を国民が負っているのか、まさに平和(自由と独立)は与えられるものでなく、自らの絶え間ない努力と武器を手に要求してはじめて得られるものだという意識を垣間見る思い。

そんな話とともに見上げれば街中に掲揚されているスイス国旗が誇らしく見え、スイス国民の愛国心を感じずにはいられません。

世界でも珍しい正方形のスイス国旗が街中にはためく様を見るにつけ、いかにスイス国民がスイスという国を愛しているか、ただ平和を望んでいるだけでは平和は維持できない、というスイス国民の意識と先人から引き継いだスイスという国への愛国心を、一見のどかに見えるチューリッヒ現地で肌身に感じたことは、たまたま海に囲まれ、現在はジャイアンのアメリカに守られている日本人として、自国の平和を見つめ直す良い機会になりました。

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