(現地で飲む)世界のビール vol.245

ベルリンビールの定番「BERLINER pilsner」

ベルリナー(ベルリンっ子)の誇り、ブランデンブルク門を眺めながら味わうベルリナーのビール、素敵なマジックアワーです。

at Brandenburger Tor in Berlin, Germany

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場所:
Curry Wolf – Currywurst am Brandenburger Tor

住所:
Unter den Linden 77,10117 Berlin, Federal Republic of Germany(ドイツ連邦共和国)
地図

備考:
ベルリンの象徴とも言われるブランデンブルク門は、ベルリンに遷都した後にドイツ皇帝になるプロイセン国王フリードリヒ・ヴィルヘルム2世(Friedrich Wilhelm II)の命により、元々統治していた王国の首都ブランデンブルクへ通ずる道の関所として、またベルリン市街の正門として建造され、1791年に完成。

門の上には四頭立ての馬車(クアドリガ)に乗った勝利の女神ヴィクトリアの像が設置されましたが、ナポレオンによるベルリン征服時に戦利品としてパリに持ち去られ、プロイセン王国によるパリ征服でまた取り返してブランデンブルク門の上に戻ったという、実は経験豊富で各国の知見が深いヴィクトリア像なのです。

そんな歴史のあるブランデンブルク門ですが、やはり昭和生まれの人には、1989年11月のベルリンの壁が崩壊した舞台としての印象が強烈でしょう。

ベルリンの壁という物質の崩壊と重ねて、人類の壮大な実験であった共産主義体制の崩壊という、まさに人類史の1ページとなる瞬間に、同じ時間を共有した興奮ともにブランデンブルク門は強烈に記憶されております。

ちなみにベルリンの壁といえば、今ではほとんど撤去されておりますが、一部残された壁をキャンバスにペインティングアートのギャラリーになっており、最も有名なのはこのドミトリー・ヴルーベリ(Д. В. Врубель)氏の描いた「兄弟のキス(Bruderkuss)」。

ベルリンに来るまでは、てっきり東西冷戦の終結を東西の指導者が抱擁してキスをするという比喩的に表現した風刺画かと思ってましたが、よくよく調べてみると、2人ともソ連のブレジネフ書記長と東ドイツのホーネッカー書記長という、両方東側社会主義国家の指導者で、ソ連時代では男性同士でも挨拶でキスをしたらしく、1979年に実際に撮影された、この絵の元となった写真もあるとのこと。

いやはや世界は想像もつかないことだらけ、自分の常識と違うからと言って、検証もせず“フェイク”だと決めつけてはいけませんね。

ちなみにブランデンブルク門から話が大きく脱線しましたが、そもそもブランデンブルク門は、平和を象徴する位置づけであったことからも、現在は東西ベルリンのみならず、東西ドイツ統合を象徴し、まさに兄弟のキスならぬ兄弟の抱擁くらいなら、こじつけも許される平和と友愛を象徴するブランデンブルク門です。

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さて、そんなブランデンブルク門とコラボして紹介する「ベルリナー・ピルスナー」ビールは、1963年に共産主義国家時代の東ドイツ東ベルリンで生まれ、その後は東側共産主義体制ドイツの中心的ビールとして愛され続けてきたため、ベルリン市のマスコットアイコンである熊を使ったデザインも共産主義の象徴である赤い色のまま現在に至っているとのこと。

なお、現在「ベルリナー・ピルスナー」は、ドイツ最大のビール醸造集団であるラーデベルガー・グループ(Radeberger Gruppe)の一員である1842年を創業の起源とする「ベルリン-キンドル-シュルタイス醸造所(Berliner-Kindl-Schultheiss-Brauerei GmbH)」にて醸造しておりますが、東西ドイツ統合前は東側共産体制ならではの国営公営企業(VEB:Volkseigener Betrieb の略)である「公営ベルリン総合飲料共同体(VEB Berliner Getränkekombinat)」で1990年まで醸造し続けてきた歴史を考えると、その贅沢とは言えない、遠慮がちな香りや苦味が納得できるビールです。

ちなみに下↓の写真は、東西ドイツ統合後の資本主義ドイツで、2016年に新しくデザインされた「ベルリナー・ピルスナー」ですが、

旧デザインの「ベルリナー・ピルスナー」よりも更に香りや苦味が遠慮がちになったと個人的には感じられ、そんなことを考えると、“理想の国家を造るために贅沢は敵だ”として物資不足に耐え続けてきた共産主義体制でも、利益追求の為にコストカットを続けてきた資本主義体制でも、ビールの美味しさとは無関係なのだと実感できた「ベルリナー・ピルスナー」の飲み比べ体験です(実際にはラベルの違いだけで、中身のビールは同じものの筈ですが)

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ところで、東西ベルリンの統合に関しては誰もが知るところですが、実はベルリン州とベルリン州を囲む様に存在するブランデンブルク州の統合も東西ドイツ統合以降から議論されており、


(ドイツ全図:ブランデンブルク州の中にあるベルリン州)

様々な分野においてベルリン−ブランデンブルク首都圏として連携や提携を進めておりますが、統合よりも独立状態を望む意見が両州内で多いため統合が進まず、世の中なんでも統合すれば良いという訳ではない、という意見があることも実感させてくれるベルリナーとブランデンブルク門のコラボ体験です。

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